about

月見かえるとは?

〜自己紹介にかえて〜

思春期になる手前 手塚アニメに出会います。
その後アニメからマンガへと移り 彼の世界観が大好きになりました。

手塚治虫のSFマンガを読んでいるとき 「人類は月から移住してきたのではないか」と思考実験をして とてもワクワクしたのを思い出します。 月を、“昔の地球”と見たとき どこからやってくるのか分からない 「懐かしさ」という気持ちが 置いてきぼりされずに済んだのです。
「懐かしさ」という気持ちは そうして居場所をひとまず見つけ 私のその後の人生についてきてくれました。 まるで月のように。

あるときは、 『ムーンパイロット』という 私家版のマンガの中に入り、 あるときは、 夢中になって観た時期の 映画作品の中に居場所を移し、 またあるときは、 夜見る夢の中に 水を得た魚のように のびのびとくつろいでいました。 さらにあるときは、 介護の現場で出会う 高齢者の生きざまの中にも 自分と同様のものが顔を出し、 「一人ではないよ」と 私を励ましてくれました。
そしてここ最近では、 “cafe月見かえる”という名の 箱庭の中で存分に砂遊びをしていました。

その箱の中に現れた、 「懐かしさ」が描き出す景色を見ながら 私はこの地球に移住してきた “月人の心象世界”とでも言えるものを カフェに来た人と共有していたのかもしれません。 私がずっと感じてきた 「懐かしさ」という感情を守り、 ときにそれに導かれ ときに二人三脚で歩んできました。 それはカフェという “協同制作の作品”にまでたどり着いたように感じています。

そしてこれから。 今「懐かしさ」という感情に まっすぐ向き合ったとき、 もうそんなに切実に 何かを訴えて来る感じがしません。 満足したのでしょうか。

桜庭 昌芳(Sakuraba Masayoshi)

その声を聴いては語りを書きとり、 その姿を感じては像を描きとり、 ここまで歩んできた そのけもの道を振り返ると それなりの道になっていました。 今後誰かがここを通ったとき、 せめて足元が明るく照らされるよう、 この星の上でホームシックになり 迷子になった自らの経験を その場所にアーカイブしておくのも 意味のあることだと思いました。
これまで月の灯りに照らされて この目や耳に浮かび上がった物事を、 描いたり綴ったりしたものたち。 それらを閉まった玉手箱を まずは開いていきたいと思います。 そして、 まだ見ぬ表現方法を開発して この地球と月とのつながりを味わえる 体験の新天地を開拓し 足元の灯りに火を灯していきたいと思います。 そうやって、 これまでとこれからを 橋渡ししていきたいと思うのです。

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